郷土文化保存伝習館(石川翁資料館)の展示を紹介します!
農村の更正、農民の救済、農業の発展に尽くし「聖農」と称された石川理紀之助。その功績を伝える郷土文化保存伝習館(石川翁資料館)に展示されている展示品の一部を紹介します。
※一部、現在では不適切とされている語句や表現を含みますが、時代背景を考慮し、そのまま掲載しています。
吉凶屏風
明治38年、石川理紀之助が61才の時に還暦の記念として作った屏風で、40ヶ条にわたり、山田村の人々へ向けられた修身斉家、治村の道が書かれています。
当時の山田村は、時とともに山田経済会発足時の意気込みや気風が薄れてきており、理紀之助は村の将来に一抹の不安を感じていました。
村人の婚礼や葬儀の際にも使用されたこの屏風には、裏に貯金預証が貼り付けられ、若い人たちへの「経済会を作った当時の心を忘れるな」というメッセージが込められています。
吉凶屏風(前面)


【現代語訳】
1.天地の御恩を忘れてはいけない。
2.土地の守り神、地域の氏神、先祖代々のお墓を大切にすること。
3.両親をはじめ、老人を大切にすること。良いものを食べさせ良い服を着せるのではなく、心配や苦労をかけないようにすること。
4.兄弟姉妹、嫁・姑、みんな仲良くすること。

【現代語訳】
5.近親者の言ったことを、みだりに使ったり、ほかに言いふらしてはいけない。
6.子どもや孫を愛するあまり、わがままをさせてはいけない。
7.親を亡くした子や、子を亡くした親、身体に障害のある人、病人を大切にすること。
8.理由もなく生き物を殺してはいけない。
9.衰えたり役目がなくなって用いられなくなった人や器物も、なるべく使うようにすること。

【現代語訳】
10.地域の人とは特に仲よくすること。
11.正直であることと礼儀正しいことを大切にすること。
12.人を使う時は、自分から動いて手本を見せること。
13.むやみに人を批判してはいけない。
14.何事もじっとこらえて我慢すること。
15.辛くて大変なことは自分でして、簡単なことは人にゆずること。
16.人からひどい仕打ちをされたら、かえって情けをかけてあげること。
17.何でも知っているような顔をしてはいけない。

【現代語訳】
18.予算を立てて、しっかりとした会計を行うこと。
19.朝寝坊や夜更かしはしてはいけない。
20.遊び事は学んではいけない。
21.時間を見つけて勉強すること。
22.無尽講(むじんこう)を作ったり、加入してはいけない。
※無尽講…組合員が一定の掛金を出し、それを抽選や入札によって互いに融通する組織。
23.利益があるからといって、家業の範囲以外のことはしてはいけない。
24.家の財産は自分のものではなく、祖先から一時的に預かっているものである。
25.他人の保証人になってはいけない。
26.博労(ばくろう)をしてはいけない。
※博労…牛や馬の売買
27.大酒を飲んではいけない。
28.賭博はもちろんのこと、小さな賭け事にも手を出してはいけない。

【現代語訳】
29.タバコを吸ってはいけない。
30.流行に深入りしてはいけない。
31.深く料理に夢中になってはいけない。
32.地形の境界線を正しく保つこと。
33.山林を大切にすること。
34.貯金や、飢饉への備えを忘れてはいけない。
35.備えは人に貸してはならないし、頻繁に取り替えてもいけない。
36.組合や村の者だからといって、必ず金を貸すことのないように。
37.こういった屏風を使うような婚礼や葬式の時は、ぜいたくになりがちな時なので、気を付けること。

【現代語訳】
38.税金はもちろん、納めるべきものは、お金に困っている時ほど速やかに行うこと。
39.経済会のことは、以前と同じことであっても、相談してから行うこと。
40.これらのことは、自分で行わなければ自分自身に生きてこない。一家で行わなければ家が衰える。村全体で行わなければその村が乱れていく。気をつけること。
「経済のことば」掛け軸
多くの名言や格言を残している石川理紀之助ですが、「経済のことば」は、その中でも最も代表的なもので、第1条「寝ていて人を起こす事なかれ」の訓言は特によく知られています。これらの言葉は理紀之助が山田経済会を組織し、山田村を救済する中から生み出したもので、農業、農家経済に対する信条がよくあらわれています。
そんな「経済のことば」が書かれたこの掛け軸は、明治32年、理紀之助が嗣子老之助に書き与えたもの。筆勢も鮮やかな大作です。



【現代語訳】
1.自分は動かないで人にやらせてはいけない。
(「実践躬行、率先垂範」。自分は何もしないで楽をしておきながら、人にやらせてはならない。何事も自分が先に行ってから人に勧めること。)
2.外国のことを学ぶには、まず自分の国のことを学んでからにすること。
(何をやるにも基本が大事。まず基本をしっかり習得してから先に進むこと。)
3.お金のみを頼りにした事業は破産しやすい。
(物事を成功させるには頭を使って行うこと。)
4.裕福に育った子供は本当の農家の心を知らない。
(農家はぜいたくをしないで真面目に農業を学び、本分を守らないと立ち行かなくなる。)
5.経済とはただ金持ちになることではない。
(ただ金持ちになるだけでなく、心を養うことが大切である。)
6.勧業で良い結果を得るには、短期間での成果を求めないことである。
(成果を得るのに近道はなく、時間がかかるもの。じっくり取り組んで、結果を急いではならない。)
7.農家で財を成したければ、農地を大切にすること。
(農業の基本は農地である。農地に投資すればいずれ必ずその効果があらわれる。)
8.樹木は先祖から借りて子孫に返すものと心得ること。
(山林は祖先から授かったものなので、みだりに処分してはいけない。祖先の恩を子孫に伝えることが孝行の道である。)
9.人の力だけで成し遂げたものは長続きしない。
(その土地の適産でなければ永続きしない。人の力だけでなく、天地の育みが必要である。)
10.子孫の繁栄を願うのであれば、草木を培養するような心持ちで行うこと。
(子供を育てるのも草木を培養するようなものである。雨風や日光に当てないで育てると、弱くなって枯れてしまうし、むやみに肥料を施せば却って害になる。過保護にしないで、適度に世話をして育てること。)
11.国全体の経済を考えて家の経済を行うこと。
(自分の家の経済だけを考えず、大きな視野を持って、国の流れをよく見て考えること。)
12.豊年でも大凶作が起こることがあるので、気をつけて観察すること。
(豊作の年でも大変な事態が起きるかもしれないので、注意深く観察すること。)
13.金銭は集めることは簡単だが、良い使い方をすることは難しい。
(巨万の富を積んでも、徳がなければ後世までの繁栄は望めない。金銭に余裕があれば、無私無欲の精神を持って、公共の利益のために活かして使うこと。)
14.思いがけない幸運で得た利益は長続きしない。
(賭け事などで高額な賞金を得ても、あっという間になくなってしまう。思いがけない幸運を当てにしないで、地道に働くこと。)
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更新日:2025年02月13日