郷土文化保存伝習館(石川翁資料館)の展示を紹介します!

更新日:2025年02月13日

農村の更正、農民の救済、農業の発展に尽くし「聖農」と称された石川理紀之助。その功績を伝える郷土文化保存伝習館(石川翁資料館)に展示されている展示品の一部を紹介します。

 

※一部、現在では不適切とされている語句や表現を含みますが、時代背景を考慮し、そのまま掲載しています

 

吉凶屏風

 

明治38年、石川理紀之助が61才の時に還暦の記念として作った屏風で、40ヶ条にわたり、山田村の人々へ向けられた修身斉家、治村の道が書かれています。

当時の山田村は、時とともに山田経済会発足時の意気込みや気風が薄れてきており、理紀之助は村の将来に一抹の不安を感じていました。

村人の婚礼や葬儀の際にも使用されたこの屏風には、裏に貯金預証が貼り付けられ、若い人たちへの「経済会を作った当時の心を忘れるな」というメッセージが込められています。

 

吉凶屏風(前面)

吉凶屏風
吉凶屏風_第一面

 

【現代語訳】

 

1.天地の御恩を忘れてはいけない。

 

2.土地の守り神、地域の氏神、先祖代々のお墓を大切にすること。

 

3.両親をはじめ、老人を大切にすること。良いものを食べさせ良い服を着せるのではなく、心配や苦労をかけないようにすること。

 

4.兄弟姉妹、嫁・姑、みんな仲良くすること。

 

吉凶屏風_第二面

 

【現代語訳】

 

5.近親者の言ったことを、みだりに使ったり、ほかに言いふらしてはいけない。

 

6.子どもや孫を愛するあまり、わがままをさせてはいけない。

 

7.親を亡くした子や、子を亡くした親、身体に障害のある人、病人を大切にすること。

 

8.理由もなく生き物を殺してはいけない。


9.衰えたり役目がなくなって用いられなくなった人や器物も、なるべく使うようにすること。

 

吉凶屏風_第三面

 

【現代語訳】

 

10.地域の人とは特に仲よくすること。

 

11.正直であることと礼儀正しいことを大切にすること。

 

12.人を使う時は、自分から動いて手本を見せること。

 

13.むやみに人を批判してはいけない。

 

14.何事もじっとこらえて我慢すること。

 

15.辛くて大変なことは自分でして、簡単なことは人にゆずること。

 

16.人からひどい仕打ちをされたら、かえって情けをかけてあげること。

 

17.何でも知っているような顔をしてはいけない。

 

吉凶屏風_第四面_2

 

【現代語訳】

 

18.予算を立てて、しっかりとした会計を行うこと。

 

19.朝寝坊や夜更かしはしてはいけない。

 

20.遊び事は学んではいけない。

 

21.時間を見つけて勉強すること。

 

22.無尽講(むじんこう)を作ったり、加入してはいけない。

※無尽講…組合員が一定の掛金を出し、それを抽選や入札によって互いに融通する組織。

 

23.利益があるからといって、家業の範囲以外のことはしてはいけない。

 

24.家の財産は自分のものではなく、祖先から一時的に預かっているものである。

 

25.他人の保証人になってはいけない。

 

26.博労(ばくろう)をしてはいけない。

※博労…牛や馬の売買

 

27.大酒を飲んではいけない。

 

28.賭博はもちろんのこと、小さな賭け事にも手を出してはいけない。

 

吉凶屏風_第五面_2

 

【現代語訳】

 

29.タバコを吸ってはいけない。

 

30.流行に深入りしてはいけない。

 

31.深く料理に夢中になってはいけない。

 

32.地形の境界線を正しく保つこと。

 

33.山林を大切にすること。

 

34.貯金や、飢饉への備えを忘れてはいけない。

 

35.備えは人に貸してはならないし、頻繁に取り替えてもいけない。

 

36.組合や村の者だからといって、必ず金を貸すことのないように。

 

37.こういった屏風を使うような婚礼や葬式の時は、ぜいたくになりがちな時なので、気を付けること。

 

吉凶屏風_第六面_2

 

【現代語訳】

 

38.税金はもちろん、納めるべきものは、お金に困っている時ほど速やかに行うこと。

 

39.経済会のことは、以前と同じことであっても、相談してから行うこと。

 

40.これらのことは、自分で行わなければ自分自身に生きてこない。一家で行わなければ家が衰える。村全体で行わなければその村が乱れていく。気をつけること。

 

「経済のことば」掛け軸

 

多くの名言や格言を残している石川理紀之助ですが、「経済のことば」は、その中でも最も代表的なもので、第1条「寝ていて人を起こす事なかれ」の訓言は特によく知られています。これらの言葉は理紀之助が山田経済会を組織し、山田村を救済する中から生み出したもので、農業、農家経済に対する信条がよくあらわれています。

そんな「経済のことば」が書かれたこの掛け軸は、明治32年、理紀之助が嗣子老之助に書き与えたもの。筆勢も鮮やかな大作です。

 

経済のことば
経済のことば_読み下し文
経済のことば_屏風_2

 

【現代語訳】

 

1.自分は動かないで人にやらせてはいけない。

(「実践躬行、率先垂範」。自分は何もしないで楽をしておきながら、人にやらせてはならない。何事も自分が先に行ってから人に勧めること。)

 

2.外国のことを学ぶには、まず自分の国のことを学んでからにすること。

(何をやるにも基本が大事。まず基本をしっかり習得してから先に進むこと。)

 

3.お金のみを頼りにした事業は破産しやすい。

(物事を成功させるには頭を使って行うこと。)

 

4.裕福に育った子供は本当の農家の心を知らない。

(農家はぜいたくをしないで真面目に農業を学び、本分を守らないと立ち行かなくなる。)

 

5.経済とはただ金持ちになることではない。

(ただ金持ちになるだけでなく、心を養うことが大切である。)

 

6.勧業で良い結果を得るには、短期間での成果を求めないことである。

(成果を得るのに近道はなく、時間がかかるもの。じっくり取り組んで、結果を急いではならない。)

 

7.農家で財を成したければ、農地を大切にすること。

(農業の基本は農地である。農地に投資すればいずれ必ずその効果があらわれる。)

 

8.樹木は先祖から借りて子孫に返すものと心得ること。

(山林は祖先から授かったものなので、みだりに処分してはいけない。祖先の恩を子孫に伝えることが孝行の道である。)

 

9.人の力だけで成し遂げたものは長続きしない。

(その土地の適産でなければ永続きしない。人の力だけでなく、天地の育みが必要である。)

 

10.子孫の繁栄を願うのであれば、草木を培養するような心持ちで行うこと。

(子供を育てるのも草木を培養するようなものである。雨風や日光に当てないで育てると、弱くなって枯れてしまうし、むやみに肥料を施せば却って害になる。過保護にしないで、適度に世話をして育てること。)

 

11.国全体の経済を考えて家の経済を行うこと。

(自分の家の経済だけを考えず、大きな視野を持って、国の流れをよく見て考えること。)

 

12.豊年でも大凶作が起こることがあるので、気をつけて観察すること。

(豊作の年でも大変な事態が起きるかもしれないので、注意深く観察すること。)

 

13.金銭は集めることは簡単だが、良い使い方をすることは難しい。

(巨万の富を積んでも、徳がなければ後世までの繁栄は望めない。金銭に余裕があれば、無私無欲の精神を持って、公共の利益のために活かして使うこと。)

 

14.思いがけない幸運で得た利益は長続きしない。

(賭け事などで高額な賞金を得ても、あっという間になくなってしまう。思いがけない幸運を当てにしないで、地道に働くこと。)

 

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